「お客様は神様です」
接客業でよく引用される三波春夫の言葉ですが、これを誤った捉え方をして、何でもお客さんの言いなり、無理難題でも受け入れるという考え方が広まったことが、クレイマー問題の一因とされています。
似てるようで全く違う、「媚びる事」と「尊重する事」
相手に「媚びる事」も、「尊重する事」も、どちらも表面的には丁寧な言葉使いで、礼節をもって応じるという点では同じですが、考え方の本質が全く異なります。
「媚びる事」は、「下心がある」ということ。
媚びるという事はお客さんに気に入ってもらう事で、より多くの商品を買ってもらおう、より高価な商品を買ってもらおうという打算が前提になっています。
そこには、売り手側の視点しかなく、お客さんはしょせんお金を払うだけの存在という冷めた目線が隠れています。
この下心を見抜かれると、どれだけ丁寧に接客してもお客さんは逆に不愉快になる可能性すらあります。
見た目の丁寧さと、その裏にある打算のギャップが大きくなると、それが違和感として伝わってしまうからです。
「尊重する事」は、相手を「家族の様に大切に扱う」ということ。
家族に対して、打算したり、下心を持ったりする人はいません。
本当の意味でお客さんの立場に立って考えることが出来る人は、常に買い手側の視点で物を考えている人と言えます。だから、接客を受ける側も気持ちよくサービスを受け取ることが出来ます。
家族に対して、自分が納得していない商品を売りつけようとする人はいません。
だからお客さんからの信頼を得やすくなります。
嘘偽りのない、本音の接客ともいえます。
たとえ使っている言葉が同じでも、態度や表情から感情は相手に伝わってしまいます。
言語以外での意思疎通のことをノンバーバルコミュニケーションと呼びますが、心で感じている事は必ず態度や表情に現れます。
「言葉」ではなく、「心」が大切。
重要なのは、表面的な言葉やテクニックではなく、根底にある心の持ち方であると言えます。
これがしっかり相手に伝わっていれば、逆に表面的には多少馴れ馴れしかったり、接客用語が適当でも、お客さんはあまり悪い気はしません。
場合によっては態度の悪いお客さんをたしなめる事があっても、相手は素直にそれを受け止めてくれる可能性が高くなります。
接客業と言っても、販売業や営業職に限らず、広義では「人と接する機会のある職業」となるので、ほとんどの人がこれに当てはまると思います。
更には仕事だけに限らず、プライベートで他人をもてなす場面においても、大切になってくる考え方と言えます。
他人を損得勘定で測らないことが、実は一番自分に取って得になると言えるのかもしれません。