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『パブリック 図書館の奇跡』(映画評/ネタバレ)

『パブリック 図書館の奇跡』を観てきたので感想を書いてみる。

 

あらすじ

寒波に見舞われた町の図書館で、行き場を失ったホームレスたちが図書館を占拠し、主人公である図書館員は巻き込まれてしまう。

一晩の暖を取る事だけが目的の占拠だったが、市長選を控えた弁護士や、視聴率獲得目的で事実を捻じ曲げようとするマスコミなどの思惑が重なり、事態は思わぬ方向で進んでいく。

 

「動機」が行方不明

まず、数年に一度の大寒波がこの物語のキーになる訳だが、その大寒波を感じさせる映像がほぼ無い(!)。

猛吹雪の中での撮影は難しいのかもしれないが、せめてCGで吐息を白くするくらいの努力はあっても良かった。

この時点で、ホームレスの悲壮感(戸外では命の危険が大きい)が無く、共感もないので、占拠する事への動機付けが実感として伝わらず、「緩いコメディ風の演出」も相まって、登場人物たちの振る舞いが何か他人事の様に感じて物語に入り込めない。

 

詰め込み過ぎて「生煮えの鍋料理」

作品内で扱われるテーマとしては、格差問題、差別問題、政治批判、マスコミ批判など多岐に渡るが、どれも消化不良でありていな表現しかなく、独自性やインパクトに欠ける。

フォロワー数が増えてはしゃぐレポーターや、政治パフォーマンスを関係者に自慢する候補者など、無邪気で表面的な形でしか、批判する対象を描けていない。
真の悪人が登場しない=子供向けのアニメ映画的な印象を受けてしまうのはこのせいだと思う。

 

リノベーション失敗による「物語の建て増し感」

事件の収拾にあたる交渉人が家出した息子を捜索するエピソードも、物語を盛り上げるために後付けされたような建て増し感が強く、蛇足に感じてしまう。

構想10年とうたわれているが、この建て増し感満載のサイドストーリーを後付けした為に時間が掛かったのだとしたら、物語の建築家としては二流という事になってしまう。

 

犬は犬、猫は猫だからこそ可愛い

犬と猫を足しても、可愛さは倍にはならない。

一番の問題は、シリアスなのか、コメディなのか、どっちつかずで中途半端で終わってしまっている点だと思う。
コメディとして笑える場面が沢山ある訳でもなく、シリアスとしての緊張感や駆け引きも無い。

素材は悪くないが、調理方法を間違えて謎の料理が完成してしまった感じだ。

カレーと牛丼とかなら美味しいが。

 

こんな感じの方向性の方が良かったのでは?

①コメディに振るなら・・

図書館で一夜を過ごそうとしていただけのホームレス達の行動が、何をどう間違ったかテロ行為と勘違いされ、いつのまにか国家を巻き込んだ大事件に発展していた!みたいなアンジャッシュのコント的な展開を強調した物語にするとか。

 

②シリアスに振るなら・・

最初は一夜の暖を取るだけが目的の図書館占拠だったが、ちょっとした行き違いからホームレスの一人が撃たれた事で、事件は思わぬ方向へ進み始める。みたいな。

 

分かりやすいテーマとシチュエーションを選んでいるという点では、決してニッチな路線ではなく、広い観客層を対象とした作品だと思うが、残念ながらその目論見は失敗していると言わざるを得ない。